身近な有害物質には何がある?影響やリスク・対策法は?
公開日 2025年4月15日 最終更新日 2025年4月15日

近年、有害物質による大気汚染や水質汚染などが社会問題化しています。
有害物質はこうした環境汚染の原因になるだけでなく、健康被害をもたらす危険があるとして、世界各国が規制を行っているのが現状です。
有害物質というと、工場や火力発電所などから排出されるイメージですが、実は私たちの身近なところにも存在しています。
人体への影響として、すぐに症状が出るものもあれば、蓄積することで害が出るものもあるため、身の回りに有害物質があっても気づけない場合もあるわけです。
そこで今回は、身近な有害物質には何があるのか、具体的な化学物質の例を挙げて行きたいと思います。影響やリスク、対策法を知っておきましょう!
有害物質の定義や化学物質との違いは?
有害物質は「体に悪い物質」という認識がある人が多いと思いますが、実際はどうなのでしょうか。
有害物質の定義については、大気汚染防止法で以下のように規定されています。
「継続的に摂取される場合には人の健康を損なうおそれがある(長期毒性を有する)物質で大気の汚染の原因となるもの」
有害物質として把握されている物質の数は、462種類にも及びます。そして、その80%以上が大気に排出されているのです。
有害物質は、粉塵やガスとして大気中に存在しており、呼吸の際に人体に入り込むといわれています。混同しやすいですが、有害物質と化学物質は違う意味を持ちます。
化学物質は有害物質を含め、元素や元素が結びついたあらゆる物質を指します。自然のものも、人工的なものも、化学物質に含まれます。
身近な有害物質の具体例
有害物質として把握されている物質の数は非常に多く、私たちの日常生活の中でも、有害物質に触れる機会は少なからずあります。
ここでは、身近な有害物質の具体例をご紹介していきます。
有機フッ素化合物(PFAS)
有機フッ素化合物(PFAS)は、フッ素の一種です。フッ素は無機フッ素化合物と有機フッ素化合物の2種類に分けられますが、両者には特徴や人体への影響などの違いがあります。

フッ素自体は聞きなじみのある物質で、「フッ素入り」の商品をよく購入される方は多いと思います。一般的に歯磨き粉や洗口剤に含まれているのは、毒性のない無機フッ素化合物です。
一方、毒性のある有機フッ素化合物(PFAS)は、フライパンのコーティングなど家庭用品に使用される事例があります。ただし、PFASのうち特に毒性が強い「PFOS」「PFOA」などは、2021年までに規制され、現在は使用されていません。日本各地で水道水や水源地からPFASが検出されたのを機に、自治体が対策を進めています。
ヒ素

ヒ素とは、自然界に広く存在する元素で、地殻中(土壌や水中)に含まれています。
火山活動や森林火災、鉱物の風化などにより大気中に放出されるため、大気や農地を含む土壌、水にも存在するものです。そのため、人は食品や水からヒ素を摂取しており、通常は尿や便から排出されるといわれています。
ヒ素には炭素を含む「有機ヒ素」と炭素を含まない「無機ヒ素」の2種類があります。このうち、無機ヒ素は有毒物質です。具体例としてヒ酸・亜ヒ酸などが挙げられます。
無機ヒ素が体内に入ると、発熱や下痢、嘔吐、興奮、脱毛などの症状が現れる、発がん性を引き起こす、といった報告があるようです。
日本では、水質基準の設定などで飲料水のヒ素濃度が低く保たれていますので、食品からの摂取が多くを占めます。無機ヒ素を多く含む食品には、米やヒジキが挙げられます。有機ヒ素は魚介類などに含まれており、食事から摂取されていますが、無害で発がん性もないものとされています。
重金属
重金属の中には毒性があるものもあり、中でも貴金属4物質は環境に悪影響を及ぼす物質として規制されています。
貴金属4物質とは、鉛・水銀・カドミウム・六価クロムのことです。これら4つの物質は、主に自動車部品や自動車製造資材、顔料、農薬などに用いられてきましたが、自治体や日本自動車工業の自主取り組み(貴金属4物質の削減)などで使用禁止、もしくは大幅低減されています。
貴金属4物質による人体への影響には、以下のようなものが挙げられます。
・嘔吐、めまい、下痢
・アレルギー、アルツハイマー病、発達障害
・カドミウムによるイタイイタイ病
・有機水銀による水俣病
・鉛による幼児鉛脳症
重金属は食品に含まれる可能性があるものの、食品衛生法や土壌の管理基準などにより規制されているため、過剰に心配する必要はないと思われます。

普段の生活で注意すべきなのは、たばこの煙です。たばこの煙には、カドミウムや六価クロム、無機ヒ素などの重金属のほか、発がん性物質が約70種類含まれています。
喫煙する人は禁煙を試みる、喫煙しない人は受動喫煙を避けるなど、環境や人体に影響がないようにしたいですね!
プラスチック

意外かもしれませんが、私たちが普段なにげなく使用しているプラスチック製品も有害物質といわれているんです。プラスチックを製品化する際には、石油以外にさまざまな添加物を必要とします。それらの添加物の中には有害物質も少なからずあります。
例えば、樹脂の可塑剤として用いられるフタル酸エステル類、ハロゲン系・リン系・無機系などの難燃剤、プラスチックの原料として使用されるビスフェノール類などが代表的です。着色料として重金属が使用される場合もあります。
塩素が含まれるプラスチックが燃焼すると、ダイオキシン発生の原因になります。また、プラスチックは常温でも有害物質が溶け出す場合もあるため、近年はプラスチック削減への取り組みが進んでいます。
VOC(揮発性有機化合物)

VOC(揮発性有機化合物)とは、常温で気体になりやすい有機化合物の総称です。
具体的な物質として、トルエン・キシレン・酢酸エチルが挙げられます。これらの物質は、主に塗料や印刷インキ、接着剤、洗浄剤、シンナーなどの有機溶剤に含まれます。
VOCは光化学スモッグの原因となる光化学オキシダントの原因物質です。
環境に悪影響を与えるだけでなく、喘息やアレルギー、がん、シックハウス症候群などさまざまな健康被害が懸念されています。
一般家庭では、塗料に含まれるVOCの影響をもっとも受けやすいといえます。塗料は家の外壁だけでなく、内装や家具にも使用されますから、日常的に影響を受ける可能性があるでしょう。
というのも、VOCの影響は塗料を塗った時だけとは限らないのです。常温で揮発しやすい物質もあり、長期的に人体や環境に影響を及ぼしかねません。
身近な有害物質から身を守る!対策法とは
私たちの身の回りには、非常に多くの有害物質が存在することが分かりました。
身近な有害物質を完全に排除するのは難しいですが、摂取量を減らし、身を守ることは可能です。
ここでは、身近な有害物質から身を守るための対策法をご紹介します。
浄水器の使用

PFASの対策法として、浄水器の使用が有効です。自治体でPFAS対策はされていますが、確実に摂取量を減らしたい場合は、自宅の蛇口に浄水器を取り付けると安心です。
蛇口直結型の浄水器で行われた試験では、PFASの除去率は10分通水後に98%になっています。また、浄水器を使用していない人としていた人では、使用していた人の方が血中のPFAS濃度が低かった試験結果もあるため、浄水器の使用は有害物質から身を守るのに効果的です。
食品の水洗いやゆでこぼし
無機ヒ素が多く含まれる食品として、ヒジキが知られています。ヒジキ内の無機ヒ素は、調理方法によって低減されるため、飲食店や家庭などでヒジキを使用する場合は、水洗い・水戻し・ゆでこぼしを行うとよいです。
乾燥ヒジキの無機ヒ素量は、水戻しで5割程度、ゆで戻しで8割程度、水戻し後のゆで戻しで9割程度まで減らせます。
食品の摂り方を工夫する
重金属が多い食品として、以下のものが挙げられます。
・マグロ類(水銀)
・米、大豆、オクラ、海藻類、魚介類(カドミウム)
・米、芋類、砂糖、豆類、野菜、海藻類(鉛)
貴金属が多いとされる食品の過剰摂取を避け、バランスの良い食事を摂ることが大切です。
併せて、ビタミンCやシステイン、メチオニン、食物繊維を多く含む食品を積極的に摂ることで、重金属の排出(解毒)を行いましょう。
低VOC塗料やゼロVOC塗料の使用

油性塗料や、従来の水性塗料にはVOCが多く含まれています。国内外でVOC排出抑制への取り組みが盛んになって以降、低VOCやゼロVOCの塗料が普及しつつあるんですよ!
特に、室内塗装では臭気や有害物質の影響を受けやすいため、油性塗料の使用を避け、低VOCやゼロVOCの水性塗料を用いることが推奨されています。
注意したいのが、水性塗料にも有害物質は含まれるということ。低VOC塗料は従来の塗料に比べてVOC含有量は少ないものの、化学物質過敏症の方やアレルギー体質の方には十分刺激になる可能性があります。
VOCの影響を極力排除したい、そんな時はゼロVOC塗料を選ぶのがおすすめです!
まとめ|身近な有害物質を把握して対策を行いましょう!
今回は、身近な有害物質には何があるのか、影響やリスク、対策法をご紹介しました。
日常生活の中で、知らず知らずのうちに有害物質に触れている、摂取している可能性があるのは不安ですよね。
しかし、どんな有害物質が何に含まれているのかを知っておけば、対策ができます。
日常生活でもっとも影響を受けやすい一つが、塗料です。「塗料の有害物質を減らしたい(なくしたい)」、そんな人はオーガニックペイントを検討してください。
対処法はいろいろあるので、できることから有害物質による不安を解消していきましょう!

担当ライター
WEBライター 原野 光佳(はらの るか)
WEBライターとして、さまざまなジャンルの記事を執筆しています。
インテリアデザインやおしゃれな家具・雑貨、色の持つ効果などに関して勉強中です。
化粧品や食品などもオーガニックを好んでおり、ユーザー目線でオーガニックペイントの魅力を伝えていきます!