公開日 2023年4月23日 最終更新日 2023年4月24日
接着剤は臭い!というイメージがありませんか?
それはVOCの匂いです。
嫌な匂いに止まらず健康被害も引き起こすVOC。VOC量の少ない低VOC製品について解説します。
VOCって何?
VOCは揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds) の略称で、塗料、印刷インキ、接着剤、洗浄剤、ガソリン、 シンナーなどに含まれるトルエン、キシレン、酢酸エチルな どが代表的な物質です。製品から見て直感的には、「有機溶剤」 と考えておけば良いでしょう。大気中の光化学反応により、 光化学スモッグを引き起こす原因物質の1つとされています。(経済産業省のホームページより)
VOCの種類は主なものだけでも約200種類と言われています。
現在厚生労働省は室内空気汚染の低減化を促進し、快適で健康な室内空間を確保することを目的に個別のVOCに対して室内濃度指針値(ガイドライン)を設定しています。この指針値には法的拘束力はありませんが、重要な指標として扱われています。指針値は人がその濃度の空気を一生涯摂取しても、健康への有害な影響は受けないであろうとされる値です。ただし、敏感な方はこの指針値をクリアしていても健康被害が出ることがあります。
指針値が設定されているVOC 13種
ホルムアルデヒド
トルエン
キシレン
パラジクロロベンゼン
エチルベンゼン
スチレン
クロルピリホス
フタル酸ジ-n-ブチル
テトラデカン
フタル酸ジ-2-エチルヘキシル
ダイアジノン
アセトアルデヒド
フェノブカルブ
これに総揮発性有機化合物(TVOC)
なぜ低VOCが良いの? 低VOC製品とは?
環境汚染や健康被害を引き起こすVOC。
VOCの放出が少ないものが低VOC製品です。
低VOC製品やゼロVOC製品を選ぶことで、環境に配慮し、健康にも配慮できます。そして安全性が高く、持続可能な製品開発に貢献することができます
低VOCの表示基準に関してはものにより様々ですが、VOCの量に配慮した製品に表示されていますので、選択する際に低VOCやゼロVOCの表記がされていることを確認しましょう。
VOCによる健康被害とは?
呼吸器障害、中枢神経障害、吐き気、頭痛、めまいなど様々な症状の原因となり、発ガン性があるともいわれています
接着剤などにはJISによるホルムアルデヒド放出量の等級がある
現在使用されている接着剤の多くは合成接着剤です。
接着剤の分類方法は様々ですが、以下の分類の3種のうちホルムアルデヒド系接着剤には等級があります。
・水性接着剤(水を溶媒とする)
・非ホルムアルデヒド系接着剤(ポリ酢酸ビニルエマルション系 ポリウレタン樹脂系 アクリル樹脂系 エポキシ樹脂系 水性ビニルウレタン樹脂系 合成ゴム系 ホットメルト系)
・ホルムアルデヒド系接着剤(フェノール樹脂系 ユリア樹脂系 メラミン樹脂系 メラミン・ユリア共縮合成樹脂系 レゾルシノール樹脂系)
JIS(日本工業規格)とは「工業標準化法」に基づき、全ての工業製品を対象として、形状や品質、性能、生産方法、試験方法などについての国家基準です。
接着剤や合板、塗料などを対象にVOCの一つであり、日本の建築基準法で規制されているホルムアルデヒドの放出量に応じて等級付けがされています。
接着剤に関しては使用用途により6種に分けられています。
- 造作用接着剤 JIS A 5549
- 床根太用接着剤 JIS A 5550
- 床仕上用接着剤 JIS A 5536
- 木レンガ用接着剤 JIS A 5537
- 壁・天井ボード用接着剤 JIS A 5538
- 発泡プラスチック保温板用接着剤 JIS A 5547
上記接着剤のホルムアルデヒド放散による区分では
最も放散量が少ない基準をフォースターF☆☆☆☆等級としており、
ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レオルシノール樹脂、ホルムアルデヒド系防腐剤、メチロール基含有モノマーおよびロンガリット系触媒のいずれも使用してはならないとしています。
ホルムアルデヒドの放散速度は5μg/(㎡・h)以下としています。
JIS規格のフォースターは数百種類あるVOCの中のホルムアルデヒドのみの基準ではありますが、ホルムアルデヒド系接着剤を使用する際はまずはフォースターであるかの確認を行うと良いでしょう。それに加えて低VOCやゼロVOCの表記がされていることや、水性接着剤や非ホルムアルデヒド系接着剤であるとVOC量を抑えられます。
接着剤からのVOC放散は長期間にわたる!低VOCが重要
建材からのVOCの放散形態は蒸散支配型と拡散支配型があります。
蒸散支配型の代表例は塗料やワックスなど。
溶剤が乾燥、または表面に存在するVOCがなくなるまで放散
VOCが室内に放散される速度は温度と表面付近の風速に影響を受け、比較的短期間で放散されます。
拡散支配型の代表例は合板やビニルクロス。
建材内部に含まれるVOCが建材表面に滲み出てきて、空気中に放散される。
周りの風速の影響をさほど受けず、じわじわと少量を長期間にわたって放散する。20年や30年かかってもVOCは放出され続けるケースも多い。
接着剤の使われ方は建材内部なので、拡散支配型。
長期にわたってVOCの影響を受けます。それゆえ低VOC製品を選ぶことが重要となります。
身近なVOCに注意しよう
大気汚染と聞くと、工場地帯の問題?と思うかもしれません。
実は家の中にある身近なものからもVOCは発生しています。
工場や事業者などから出るVOCには法令による規制や自主的な取り組みで削減が行われていますが、家庭やオフィスでは規制等がありません。
東京都が平成22年に行った、一般家庭やオフィスからのVOC量の推計調査では、エアゾールスプレーのガス(可燃性のもの)塗料 接着剤 医薬品 化粧品 防虫剤などの割合が多く示されました。
家の中でVOC、化学物質の発生源例
大阪府のホームページより